突入!ところが、どっこい!??(11月21~23日中編) |
22日
(また、やっちまったな!! 本当に節操のない奴だ・・・)
溜息を付きながら、布団を出る。
苦しそうな私の顔に、皆「無理をしなくても良いですよ」と声を掛けてくれるが
私の節操のなさで、皆の楽しみを奪うわけにはいかない。
「え~い! よし、行くぞ。赤岳主稜へ行くぞ!!」
自らを奮い立たせるべく、声に出した。
玄関先の温度計はプラスの2.5度を指していた。
(暖かい! 昨日よりも暖かい。雪がないのはつまらないが
それはそれで、体が楽でよろしい・・・)
「さあ、行くぞ! よし、行くぞ!!」掛け声だけは、元気が良いが
中山乗越までの僅かな登りですら、アゴが出る始末だ。
(もう、やっとられん! こんなこと、やっとられん!!)
やっと行者小屋に着いたが、一息もつかせてもらえない!?
文三郎道の情け容赦ない登りは、まだまだ続く。
(もう、やっとられん! こんなこと、やっとられん!!
だいたい、何が面白いのだ!?・・・)
(雪は何時になったら降るのだろう??)
12月も真近だというのに、渇いた景色が広がっている。
まったく冬の気配が感じられない!
ゴロゴロとした登山道を冬靴で動くのは、とても疲れる。
主稜の取り付きが見えてきた。
心配していたが、予想通り!!??
どうやら、ここへのアプローチが核心になりそうだ?
文三郎道から分かれ、アプローチに突入するのだが
ガラガラの斜面を100m程トラバースしなければならない。
一度滑ったら終わりだ!!
用心深く、ロープを張ることにした。
私以外の4人にとっては、初めての赤岳主稜だ。
楽しみなクライミングが始まった。
雪の無い曲がりくねった岩肌に、ロープを伸ばすのだが
ロープが滑らない! 重い!!
「よ~し、のぼってこ~い」
Wロープの回収だけで疲れてしまう。
(あと何回、これを繰り返さなければいけないのか???)
こんな状況の赤岳主稜は人気がないのだろう。
この広い西壁に我々5人以外、誰もいない!!
ひび割れ、もろくなっている岩が山頂に向かって続いている。
暖かいとはいえ11月下旬、赤岳の尾根筋だ。
風が吹けば、それなりに寒い!
二人してグチグチと文句を言いながら、ロープを繰り出す。
なんだかんだと言って、やっと阿弥陀岳山頂と同じぐらいまで
登り上げた。
景色が爽快だ!!
誰にも制約を受けない。
50m目一杯伸ばし、回収だ。
(今、何ピッチ目だ?・・・)
クライミング開始から3時間。
気持ち良く「終了!!」の声が出た。
と、同時に谷を吹き上がる風!!
雲が湧き上がってきた。(なんとか逃げ切れたな!)
何処でルート終了とするかは、人それぞれだろうが
「とりあえず、山頂にマーキングだけは付けに行くか・・・」
5分ほどの所にある赤岳山頂に足を伸ばした。
山頂から南を見やれば、霞んではいるがランドマークが見て取れた。
(なぜ日本人は、この山を見ることで一喜一憂するのだろう?
それは、日本人だからか?? DNA???)
ヨシゾーとエイゾーは今日下山しなければならない。
「さあ、トットと戻るぞ~」
お地蔵様に挨拶して、地蔵尾根を駆け下りた。
(駆け下りた?? いや、這いずり落ちた。)
くどく、ねちこい地蔵尾根をやっとの思いで下り、行者小屋に戻った。
振り返って見上げれば、山頂は雲の中!
(明日の天気はどうなんだろう!?大丈夫か・・・??)
荷物を片付け、慌ただしく二人は下りて行った。
キャンディーではアイス馬鹿達が飽きもせず、自分をしごいていた!!
(本当にタフな連中だ! だが、こいつらは絶対にMだな・・・)
そして、こいつらも下りて行った。
「また来週~!!」の声を残して!?
そして取り残された我ら三人。
明日はキャンディー特訓をして帰るだけだ。獲物は、まだ残っている。
解き放とう!!(今朝の後悔は何処へ行ったんだ・・・・?)
向かいでミハエルが舌なめずりをしている!??
酔った勢いか?訳の分からん、言葉が出た。
「よし!筋トレだ!!」
「タイキ~、明日の朝食は遅くて良いからなァ~!!」
後編に続く
by 隊長