穂高・中又白谷 再チャレンジ(9月23~25日) |
クラシック・ルートがある。
ステラのシノブ師匠の、お勧めのルートだ。
白く輝く開けた谷を登る、気分爽快なルートらしい!
昨年、その強い勧めの言葉に押され、シノブ師匠の30年前の情報を頼りに
チャレンジした。
だが、F1すら越えることができず、あえなく敗退した!!
(この時の、様子はこちら)
そして今年、昨年の敗因を踏まえ、気分を入れ替え再チャレンジすることにした。
中又白谷と言っても、殆どの人が知らないだろう。
今回のコースを地図で紹介する。
徳沢~新村橋~中又白谷 (F1から標高差650mの四つん這い) ~奥又白池~
中畠新道~新村橋~徳沢という、ルンルンで行って帰ってこれる予定の、周遊コース?
メンバーは私、ヨシゾー、タモゾーの3人。
タモゾーは昨年敗退メンバーの一人だ。
再チャレンジを、とても楽しみにしていた。
23日
今日は徳沢へ移動するだけだ。
朝のんびりと出発し、昼過ぎに上高地に入った。
三連休の初日だが、アカンダナ駐車場の混み具合に比べて、意外と人が少ない!!
もう皆、山上へと向かった後なのだろうか・・・
我ら三人、明日の期待と不安を胸に、徳沢へと歩き始めた。
秋空になり、空気がおいしい!
徳沢へ着き、徳澤園のタカヒロに歓迎ビールとソフトを、ごちそうになった。
久々の訪問で、ゆっくりと話がしたかったが
ちょうど夕食の仕込みの時間帯で忙しく、落ち着いてはいられなかった。
喉が潤ったところで、マイホームの建設にかかった。
今回はテン泊だ!なぜかと言えば
明日の出発は早く、ヘタをすればビバークかも知れない!!
宿泊にすると、帰れなかった時に無用に心配をかけてしまう。
徳沢までだったら荷物が多くても苦にならないし
(たまにはテン泊もいいか) と、自己完結スタイルにした。
さすがテン泊クライミングは荷物になる。
快適に寝れるよう、3シーズンシュラフを持って来たせいもあるが
60ℓザックが、パンパンになってしまった!
テン場での、足休めグッズにこんなのを持ってきた。
ビブラム社の5本指シューズだ。
靴底は薄く、素足感覚が味わえる。
今でも、輸入しているのか知らないが、コンパクトに持ち運びができ
テン場シューズには、お勧めできる。
天気予報通りに寒くなってきた!
とても、外で騒いでいられる温度ではなくなってきた!
そさくさとテントに逃げ込み、夕食までの時間を宴会とした。
今宵の夕食は、徳沢園の岩魚定食だ。
カリカリに焼き上げてあり、頭の先から尻尾まで、何も残さずに食べることができる。
とても美味かった!!
テントに戻り、宴会を続けようとしたが、寒すぎる!!
今晩は3度ぐらいまで、冷え込むという!
明日の朝は4時起きだ。
20時前には、早々とシュラフに潜り込んだ。
24日
目覚ましに起こされ、外に出てみた。
ヘッデンに照らされたテントは、霜で真っ白になっていた!!
やはり、相当冷えているようだ。
私は全く寒さを感じることなく寝られたが、軽量化に努めたヨシゾーは
「寒かった」 と、嘆いていた。
5時、予定通り出発した。
まだ暗い中を、ヘッデンを頼りに新村橋へと向かった。
そして、中又白谷へのアプローチである藪沢へ突入した。
昨年は初めての道程が長く (まだか、まだか・・・) と、思いながら歩いていたが
2回目ともなると意外とあっさり、F1に着いてしまった!
F1は相変わらず、威圧感のある面構えだ!!
ここで腰道具を装備し (今年は、絶対にやっつけるぞ!) と心に誓い
気合いを入れた!
F1の攻略方だが、昨年は青ルートでチャレンジ。
藪漕ぎと時間切れで敗退した!
タカヒロの最新情報を信じたばっかに・・・。
シノブ師匠は、右から行ったと言う。
たぶん黄ルートがそのルートだと、思われる。
いろいろ調べても、チャレンジする人が少ないだけに情報がない。
「右からだ」 「左からだ」 と、怪しい情報しか手に入らない。
しかし、登るのは我々だ。自分達の力を信じ、攻略するしかない!
突っ込む私の独断で、赤ルートの草木帯を正面突破することにした。
(見にくいときは、写真をクリックしてください。大きく見れます)
今年は誰も入っていないようだ。全く、踏み跡ができていない!
腰丈の草を掻き分け、取り付きへと向かった。
いよいよクライミングの開始だ!
潅木に到達するまで、プロテクションを取ることができず
慎重に、かつ大胆に歩を進めた。
結果はオーライだ!!
念願のF1の落ち口に立ち、下を覗き込むことができた。
(うひょ~、高い!!) 結構満足!
此処でぐずぐずはしていられない。まだ先は長い。
見上げれば、素晴らしい景色が広がっているのだが
この先は、どんな風になっているのか、全く未知だ!
プレッシャーが高まってきた。
Fナンバーをつけて良いのか良く分からないが、巨大チョックストーンが
挟まった、大きな段差が次々に現れた!!
F3だったかF4だったか、覚えがないが
どうしても越えられない所に、突き当たった。
高巻きルートを探すが、どれもシビアだ!
意を決してよじ登った。
しかし、一度弱気になって逃げをうつと、どんどんと楽な上へ行ってしまう。
それは、すなわち谷底から遠ざかるということだ。
それをやってしまうと、後に残るのは [敗退] の二文字だけだ!
シノブ師匠からも、くどいように 「沢芯を行け」 と、言われていた。
思い切って、怖いトラバースをこなし、また底に戻るべく
カムでセルフを取り、懸垂支点を構築しようとしたが
捨て縄を掛けれそうな所がない。
焦りがでてきた!
こうなれば、今回の秘密兵器 [ハーケン] の出番だ!
しかし、打てそうなリスがなかなか見つからない。
なんとか見つけ、打ち込んだ。 「カーン、カーン」
(気持ちエェ~!!こりゃ、打ち込む所さえあれば鬼に金棒だ)
二人を呼び込み、懸垂で底に下りた。
此処から暫くは、難なく進むことができた。
そして、大きく開けた場所に出た。
F5だ。(だと、思う)
その白く輝いた岩肌を見つめ(さて、何処から行くべェ~な) と、思案した。
F5上から下を覗いて見たが、此処もけっこうな高さだ!
谷底が遠く見えた。
これが、数少ない情報のひとつである50m1本瀬のF8だ。
(写真で見ると流芯の右側を登れそうに見えるが
現場では、とてもその気になれなかった)
迷うことなく、左の尾根筋で高巻いた。
F8からは、狭くて薄暗い廊下が続き、突き当りの壁を攀じ登ると
そこは、これも巷では有名な200mのルンルン大スラブだった。
先ほどから、県警ヘリと防災ヘリが盛んに旋廻をしている。
なにか事故が起きたのだろうか?
ふと後ろを振り返ると、何を思ったのかタモゾーが
ヘリに向かって、大きく手を振っているではないか!!
「タモゾー、ダメだって!!手を振っちゃ~」 と、叫んだ。
「え~、ダメなの~?なんで~?」 と、本人は不本意な様子。
案の定、県警ヘリが向きを替え、こちらに向かってきた!!
顔を下げ、通り過ぎるのを待った。
「山でヘリに手を振ると、こーゆー事になる」 と、たしなめた。
快適スラブとは言え、真剣に取り組まなければいけない所もあった。
立って歩ける所は良いが、中腰姿勢が長い!
これが、腰にくる!時々腰を伸ばしながら登り続けた。
大スラブを登り上げると、やっと前穂を望むことができた。
「来たよ!来たよ!もうすぐだ。頑張ろう」 と、声を掛け合った。
もう谷ではなく、沢になってきた。
終了点手前で、シノブ師匠に教えられていた、中又白の流始点を
見つけることができた。
頭を突っ込み、直接味わった。冷たくて美味しかった。
そして、ついに「やった~!やりましたよ~!」
お立ち台の上で、歓喜の声をあげた。
初めて目にする、奥又白池だ。
天気が良いせいもあるが、静かで美しい景色を見ることができた。
もう少し、紅葉が来ていれば申し分なかったのだが
それは、贅沢か・・・
どうも北尾根の方で事故があったようだ。
県警ヘリがホバリングしている。
収容態勢に入ったようだ。
我々も目標点に着いたとは言え、まだ帰らなければいけない。
シノブ師匠は「源流コーヒーを楽しんでこい」 と、言っていたが
とても、そんな余裕はない!
「さあ、トットと帰るぞ」
中畠新道を下り始めた。
だが、この道は悪い!!
もっとも、クライマーしか通ることがなく
一般道でもないため整備されてないのは、当たり前の話だが
それにしても、まるで獣道だ!
下るだけで、ヘロヘロになった!
疲れ果て、パノラマ道との出会いで二人を待つ間
麓を見つめながら、何を考えるわけでもなく、心が無になっていた。
梓川出会いの手前で、県警山岳警備隊の若者とすれ違い
今日の状況を聞いてみると、今日は4件の救助があったそうだ。
やはり、上の事故は死亡事故で、北尾根4峰から滑落したらしい。
「ヘリが近づけず、隊員が降りてピックアップできる所まで運んだ」 と、言っていた。
(くわばら、くわばら、絶対世話にはならないようにしよっと)
なんとか、かんとか、戻ることができた。
朝5時からの12時間行動だった。
今年の夏の三大祭りは、いずれも12時間行動になってしまった。
タカヒロの差し入れビールで、目標100%達成と無事戻れたことの
喜びを、分かち合った。
アルコールの飲めないヨシゾーは、ソフトで乾杯!
(かわいそうに、酒がのめないって不幸すぎる?)
テントに戻るものの、皆グロッキーだ。
宴会をする気にもなれない!
良く分かった!!
(いつも、あれだけ宴会ができるってことは余力がありすぎるのだな) と
いうことが・・・。
次回からは、どの山行も、もう少しハードに設定しなければ
いけないのかも・・・。
(て書くと、あちこちからブーイングが起きそうだ!)
食欲が湧かないが、夕食のおでん定食を無理矢理、腹にねじ込み
語らうこともなく、7時前に寝た。
外では、若者達が「わ~、星がきれい~」「あっ、流れ星だ」などと、騒いでいる。
(いいな~、若いって!てか? え~い、うるさい!!寝れんぞ!)
25日
今日は、帰るだけだ。
穂高に朝日が当たり始めた。
良い天気だ。
朝起きて気が付いたが、大テント村になっていた!!
勝手な朝食を、それぞれに取り、荷物の片付けに入った。
片付けが終り、タカヒロに別れの挨拶をし、上高地へと動き始めた。
ありきたりな (穂高よ!いつの日か、また・・・) の、図。
さすがに徳沢発は近い!
9時半には下界に戻ってしまった。
(あ~、明日からまた仕事だ。嫌になる。もっと遊んでいたい)
昼にはもう高山にいた!
昼飯を甚五郎ラーメンでとり、15時前には自宅に着いてしまった!
ゆとりの日と、いっぱいいっぱいの日と、不思議な感覚の二泊三日の旅だった。
楽しかった。やみつきになりそうだ!
[中又白谷]
クライミンググレードは低いものの、原始ルートなだけに
いろんな意味での総合力が試された。
冒険好きには、楽しめる好ルートだと思った。
いつも言ってる事とは違うじゃないかと、叱られるかもしれないが
「やっぱり、山はええの~!!」
後記
今にして思えば、昨年の敗退。あれはあれで良かったと思う。
あの時、無理してF1を越えてしまい、先に進んでいたら大変なことに
なっていたと思う。
きっと、穂高の神が「出直して来い」と、追い返してくれたに違いない。
これから向かわれる方は、フル装備で行ったほうが良いと思います。
カム類はキャメロットNoで0.75~4まであると、安心できます。
ハーケン、リングボルト類も絶対持っていた方が、良いです。
行きたいけど、もっと詳しい情報が欲しい方は、ステラにお問い合わせ下さい。
私が、同席できるタイミングであれば、詳しくお教えします。
by 隊長